2度目の男①
とあるアプリで知り合った人は、私と同じジャンルの仕事をしている。お酒を飲むことが好きで、割とすぐに会うこととなった。
サバサバしているのであろうか、会う数日前になっても連絡が来ない。忘れているのだろうかと思い、私は別の予定が入りそうだったので今回会うことを延期した。
大丈夫ですか?何か都合が悪くなりましたか?
優しい文字が返ってくる。
直前になっても予定が立たなかったので宿をとっていないこと、翌日仕事が入ってしまったことを正直に伝えて日程を変更してもらった。
事前に私から連絡していればよかったのだろうけど、段取りの悪い人なのかと思っていた。
改めて会う日程を組み直していただいた。
いざ当日。夕方から会う予定になっていたので
その時間まではSNS繋がりの仲のいいゲイと会う。
パスタを食べて、カレーを食べて、クレープを食べるという女子高生ばりのプランで。
夕方になりいよいよ初めましての瞬間。
「○○駅の○改札を出たところにいます。紺色のキャップです」
彼からメッセージが届く。
見渡すとやはり私が住むところよりも人が多い。
どこにいるだろうとキョロキョロしていると
本を片手に慣れた様子で座る1人の人がいた。
「○○さんですか?」声をかけるも気づかれない。
「こんにちは!」視野に入れて手を振ると、ちょっと不思議そうに会釈をして本を閉じる。
予約をしているというお店まで歩いて5分ほど。
沈黙が続かないようにお互い話をしていた。
仕事の話がメインになっていたが、私のことを「君」
と呼ぶのがなんだか引っ掛かった。
彼がお勧めしてくれたビアバーに行った。
たくさんの種類のビールにお互いメニュー表と睨めっこしながら、前半はぎこちない話が続いた。後半は少し酔ってきたのだけど、なんだか楽しくなった。わりとフランクな話もできた。
君と呼ぶのはこの人の癖なのだろうか。
一件目のお店を出たところでまだ19時ごろだった。
私は一旦ホテルにチェックインし、二軒目に行きましょうという流れになった。
ニ件目は和風作りの居酒屋さん。
掘り炬燵の席に案内された。お互い酔っていて、上機嫌だった。
「君の好きなものを頼みなよ。」優しい低い声。
ベロベロになり始めていて、何を話したかは覚えていなかったけど、炬燵の下でお互いの足が触れ合っていたことだけは覚えている。
よければLINEを。
アプリ内でメッセージのやり取りをしていたので
次の日ようやくLINEを交換した。
(続く)